聞き手
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今年の一月に初めての世界戦を戦ったわけですが、その試合に関してはどういう位置づけだったんでしょうか?
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西澤
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世界チャンピオンというのは、「次の」目標なんです。
自分は十九歳でボクシングを始めて今年で二十年目なんですけど、始めた当初から目標を一つひとつ設定してきたんです。まずはプロテストに合格するという目標、次はデビュー戦で勝つという目標、その次は新人王、という風に一つずつクリアしていったんです。もちろん世界チャンピオンというのは最終目標なんですけど、その前にやらなきゃいけないことがあるじゃないですか。それで、足元を固めるという意味で一つひとつ目標をクリアしていくという・・・その中で、世界チャンピオンというのは次の目標だったんですね。東洋太平洋のタイトルは獲ってましたんで、それを返上して次は世界だ、ということです。
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聞き手
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ボクシングというと減量もありますし、ストイックでなければできないスポーツだと思うのですが、西澤さんはご自身をストイックだと思いますか?
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西澤
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試合前になるとそう感じることはありますね。試合ごとにだいたい十キロくらい体重を落とすんですけど、その中で集中力を高めてトレーニングができていると思います。
二十代の頃はボクシングに対して一方通行で、周りの言葉を受け入れないところがあったんですよ。考え方も浅はかというか、「強さを証明しさえすればいい」って、それだけだった。でも二十代後半になり経験を積むにつれて、周りの声を素直に聞き入れられるようになりましたし、自分の目標に向かってすごく集中できるようになりました。ボクシングのことしか考えてなかったのが、スポーツに限らず各界の一流の方のトレーニング方法や考え方を参考にすることによって、自分を客観的に見るようになった。
それで、勝つために何をしなければいけないかとか、ボクシングはただの殴り合いではなく科学的で奥の深いスポーツだということがわかってきたんです。
うちの練習生もみんな、新人王になりたいとか日本チャンピオンになりたいとか、夢はあるんです。でも夢もいいけど、必ずつかんでやるという目標を、自分は大切にしてきました。そのために今何をすべきかということですから。ただ体をいじめただけでは心技体として強くならない。気持ちばかり先走ってもいけないんですね。冷静さが大切。二十代の頃はリングに上がると相手しか見えてなかったけど、今はもう四方が見えますよ。観客の声とか、極端に言えば放送席の解説まで聞こえる。解説者の方は元世界チャンピオンといった先輩方なので、「この左に対して右を・・・」なんて言っているのが聞こえたら、その数秒後にそれをやってたり(笑)。そういう冷静さは、一流と言われる選手は若いうちから自然と身につくものですけど、自分に関しては経験が今の自分を築き上げています。
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聞き手
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二十代後半にターニングポイントがあって、そこで変わったわけですね。
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西澤
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そうですね。新人王を獲った後、怪我や挫折を繰り返して三年間全く勝てない時期があったんですが、そういう時に一流の人達を参考にしたんです。
ボクシングを通じていろんな方と知り合う機会があるんですけど、俳優の菅原文太さんと一緒に食事する機会があって、「チャンピオンになりたいんであれば、人と同じことをやってもダメ。心技体を追い込むトレーニング、考えるトレーニングをしなければ勝てない」という話をされたんです。その時から、今は試合前に必ずやっている単身での軽井沢合宿を始めたんです。それが十年くらい前です。その合宿で自分に足りない部分が見えてきて、それを克服することで除々に勝つコツを覚えていったんです。
自分は三十八歳ですが、日々の練習の中で発見があるんですよ。だから、ピークはいつかって言われるとまだ先にある、四十歳くらいじゃないかと思うんです。世界を目指すとなると、「ピークは過ぎた」っていろんな方面から聞こえてきますけどね。そういう声を素直に受け止め、自分の力量を測りながらやってる上で、ピークはまだ先だって実感できますよ。というのは、軽井沢の山ごもりで十年前から同じランニングコースをタイムをつけて走ってるんですけど、昨年末のタイムが一番良かったんですよ。コースに慣れているというのもあるんですが、そうはいってもハードなコースですからね。体と相談しながら、「まだできるのか?」と自分を見つめる意味でもそういう合宿を続けてるんです。
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